部材断面の決め方
断面の決め方(1)
構造計算での部材断面を決めるのはベテランの技術者でもマチマチです。マチマチということをさらに説明しますと技術者それぞれに断面決定の優先順位が有るということですね。
もっともカンタンな事例として。片持ち梁の計算を採り上げます。
スパン:L=3.0[m] 先端に10[kN]の集中荷重が短期で作用してます。
この片持ち梁の応力、すなわち曲げモーメント:Mを求めます。
M=10kN × 3m=30kN・m です。
曲げ応力度:σ=M(曲げモーメント)/Zx(断面係数) で部材をH形鋼で仮ぎめすると
鋼材の短期許容曲げ応力度:sfb=235N/mm2 から
σ=sfbと置き換えて計算式を変形すると
M/sfb=必要断面係数が出ます。(単位をそろえることを忘れないで下さい。)
必要断面係数:Zx=M/sfb=3000[kN・cm]/23.5[kN/cm2]
Zx=127.65[cm3]を出します。
それで、鋼材カタログから
- H-175x90x5x8 (Zx=138)
- H-148x100x6x9 (Zx=135)
- H-125x125x6.5x9 (Zx=134)
3つの部材をセレクト出来ます。
さて、迷うのはここから。
初心者の方の頭に浮かぶ言葉は
「何を基準に求めていけば良いのだろう?」ということ。
それで、上司や先輩に
「どの断面にしておくのが良いですかね?」と尋ねると
先輩は、
『私ならH-125x125 だね。』と答えるかもしれません。
あなたは先輩のアドバイスに応じてH-125x125を選んで今度は上司へ報告したとします。
すると、上司は
『なぜ、H-175×90を選ばなかったのかな?』と、あなたに尋ねます。
こうなると、混乱しますね。
先輩のアドバイスと上司の質問で板ばさみになってしまいます。
それに、初心者の頃は教えてもらう上司や先輩に影響を受けやすいです。
それでは、上のような展開を少しでも避けるやり方はあるのでしょうか?。
その、やり方を下の内容で考えてみましょう。
断面の決め方は?(2)
3つの断面から一つを選択するのに先輩と上司で部材サイズが異なっていました。
今のあなたには選択する判断の材料が少ないので「この部材だ。」と決めきれない状態なわけですね。
そこで、H-125x125を選んだ先輩へ
「なぜ、この断面なのですか?。」と質問してみましょう。
先輩が「3つのうちで断面係数が最も小さいからだよ。」と答えてくれたのなら
『必要断面係数に最もちかい部材断面はどれか?』という切り口で断面サイズを決めたわけです。
一方で上司への質問へは
「断面を決めるのに、何を優先されますか?」と質問を受ける前に尋ねましょう。
上司は「鋼材重量が軽く、たわみ難い断面を選ぶのが良いね。」と答えてくれたとします。
それは、『低コストで高い剛性をもっている断面はどれか?』という切り口で断面を選んでます。
断面の決め方。
それは、計算した人の思考です。
思考には、人それぞれでパターン/好みが存在します。
パターン/好みがあるというのは図であらわすことができます。
図であらわすことができる。
すなわち、〈紙の上〉に描けるということになりますね。
カンタンに書きますと
- 断面サイズを3つ選択肢として出た
- ・H-175x90x5x8 (Zx=138)
・H-148x100x6x9 (Zx=135)
・H-125x125x6.5x9 (Zx=134)
- (それで?)なにを優先して決めるか?
- ・必要な値に最も近い断面 ?
・コスト重視?
・部材の変形のしづらさ重視?
- 3つを満足するのは有るか?
- ・ある?
・ない?
- (それなら)3つのうちで2つ満たすのは有るか?
- コストと変形のしづらさを満たす断面が「H-175×90」だった。
・・というフローで頭の中が展開して断面を決めたことになりますね。
(フローチャート図で描けます。)
断面の選択に迷ったときには
- 選択肢を紙に書き出す。
- 判断の基準も紙に書く。
ということを行ってください。
そうすれば、先輩や上司もあなたの説明に納得して下さるでしょう。