RC造ルート1:壁量とは

1)コンクリートの水平断面積
鉄筋コンクリート造の建物を大きな刃物で、各階ごとに
「スパッ」と輪切りにしていく様子をイメージして下さい。
それで、各階ごとの輪切りの切断面に注目していきます。
輪切りされた切断面の断面積をX,Y方向(直角2方向)ごとに
・柱の断面積
・壁の断面積 それぞれを集計します。
この水平断面積が壁量の素(もと)になります。
2)強さで抵抗
建物に作用する地震力に抵抗するのは壁と柱で、その中でも
壁の強さがより支配的になります。
この強さの素(もと)になるのは、コンクリートの許容せん断
応力度になり、鉄筋は強さの要素に含まれず
さらに詳しく説明すれば、コンクリートの設計基準強度により
強さが変化して、同じ建物でも使用するコンクリート強度が
異なれば強さが変わります。
3)志賀マップ
東北大学の教授であられた志賀敏男博士。
志賀先生がお作りになられたのが、『志賀マップ』と呼ばれる図表です。
志賀マップの名付け親は志賀先生が恩師と仰いだ
梅村魁(うめむらはじめ)先生でして
(梅村先生は新耐震設計基準の生みの親)
1968年に起きた十勝沖地震での被害
調査でRC造被災建物から、柱・壁の水平断面積量とせん断耐力度との相関関係
について表した図表です。
(詳しくは下記)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj1975/28/9/28_46/_pdf/-char/ja
この図表から壁量の少ない建物の被害が多いことが分ります。
RC造耐震設計ルート1の根幹をなすのが〈壁量〉で、壁量には柱の断面積も
含んでいますが
建築デザインの観点では壁という要素は視界を遮るものと解釈されることが多く
壁を入れるというのを避けたがる意匠設計者が少なくありません。
しかし、上述の志賀マップで設計予定の建物の柱壁量をプロットして見せると、
途端に顔を曇らせた方もいました。(安全でない領域に入っていたので。)
安全性について目で見てわかるように示すのが大切だと判らせて下さる
図表のひとつが志賀マップなのです。