構造計算での断面サイズは?

構造計算を業務とする現場では日々でさまざまな出来事が有ります。

そのなかで、私も経験したことがある
「構造計算あるあるネタ」とでも言えるような話をしてみます。

◆部材が大きいと言われた、、、

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とある設計事務所(構造専業)を想定します。

プルルルルルッ(電話音)

「はい、〇〇設計事務所です。」
 

『あ、△△さん?。この間に計算してくれた事務所ビルの柱断面なんですけど。』

「はい?。どうかなされました?。」

『デカいよ!。大きすぎ!。こんな断面は僕が設計やってて見たこともない!。
所長はチェックしてくれてんのかな?。』

「この建物ですと、300ミリの角形鋼管柱で
細いということは感じませんが、、、。」

『とにかく、大きすぎるの!。もう一度計算やり直してよ!。
間違ってんでしょ!。とにかく、大急ぎでね!。』

ガシャッ!(電話を切る音)。

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電話を受けた方は心拍数上がってます。
経験だって十分とは言えません。(2~3年ほど)

自分の頭の中でグルグルと色々なことが回っています。

・計算条件を間違えたのか?。
・荷重の設定が大きすぎたのか?。
・構造計算で単位を間違えてないのか?。

それからは、上のように思いついたことを
一つひとつ確認していく作業しか思いつくことはありません。

・・・・・・・・・

深夜まで費やしながら、確認作業を行いました。
しかし、何度か見直しを行っても計算に間違ってはないとわかりました。

お客さんは納得するのでしょうか?。
それに、このお客さんは感情的になるとなかなか収まらないタイプのようです、、。

さぁ、あなたなら同じような状況で、どのような対応を考えますでしょうか?。
この人物になりきってシミュレートしてみて下さい。

後述に対応のヒントをお伝えします。

◆この断面小さ過ぎない?

前段は、とある設計事務所の日常を切り取りまして、
構造計算を行ったら部材が大きいと言われたケースでした。

次は逆のケースです。
それでは、ストーリー仕立てで始めます。

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この設計事務所は大手総合設計事務所の
協力(外注)事務所として業務してます。

一通のメールが入りました。文面は以下の内容。

『貴社がこの度算出された部材断面は過小であると判断してます。
つきましては、弊社へお越し願い断面算出の経緯をご説明下さい。』

このメール文を受けた担当者(構造計算キャリア2年)は、
先輩(構造計算キャリア5年)と一緒に大手総合設計事務所へ伺いました。

大手総合設計事務所の担当(以下Aさん)

Aさん:『あのですね、今回の建物の断面小さ過ぎませんか?。
1000平米で250角の柱は細すぎでしょう?。』

先輩:「いえ、この規模でも250角で部材断面は許容応力度以下ですし、
層間変形角も規定値以内には収まってます。」

Aさん:『私の経験上では最低350角ですよ。
構造計算では、どこまで確認されてますか?。部材の塑性率はどのくらい?。
柱脚の累積塑性倍率は、いかがですか?。極稀(ごくまれ)の地震レベルまで計算してて
P-δ(ピーデルタ)効果は考慮したんですか?。』

矢継ぎ早に質問が被されます。
先輩もスグには返答できません。

先輩:「・・・・・・・・・」

Aさん:『答えられないのですか?。
貴社は、もう少しキャリアのある人を担当につけて下さりませんかねぇ。』
(やや、イライラを隠せずに、、、)

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今回は前回とは違って、相手は構造設計の経験者です。
キャリアもそれなりに積まれてる感じですね。

感情的な発言ではなく、理屈は踏まえて計算した内容について質問されてます。

請け手の担当者は、構造計算で間違いをしているのでしょうか?。
それとも構造計算で不足している項目があったのでしょうか?。

Aさんの要求されていることへ
担当者と先輩はどのように対応をしたら良いのでしょうか?。

あなたも担当者や先輩の側になって状況をイメージしてみて下さい。

下段にに上段の分とあわせまして
私の経験上からの対応のヒントをお伝えする予定です。

◆断面で振り回されないためには?

上の2段で部材断面での客先からの問合せ事例を伝えました。
あなたは、どちらかのことを経験したことがありますでしょうか?。

経験済みならご自身の対応と今回の私の対応のヒントと比べてみて下さい。
未経験ならば、今後に起こりうるだろうとアタマの隅に留め置いて下さい。

まず、部材断面が大きいと電話したお客さん。
この方の背景は
「主に木造住宅を主体として設計している。
年に1棟くらいは鉄骨3階建てを頼まれたりする。」

建築設計者を想定しました。

木造住宅を日常業務で設計していますと
柱のサイズは105ミリ~120ミリまでです。

鉄骨3階建ての建物を設計しますと構造計画の工夫を行わずに
構造計算を行いますと、柱のサイズは300ミリに届きます。
(スパン/階高にもよりますが)

ですから、日常業務で105~120ミリのサイズしか目にしていなければ
300ミリは途方も無いサイズに感じたりします。

次に部材断面が小さ過ぎないかと呼び出してきたお客さんは
ついこの間まで自らが超高層ビルの建物を
時刻歴応答解析を用いて計算してきた。でも、4月からは管理職となった。

ベテラン構造設計者を想定しました。

依頼した建物は1000平米ですけれど〈平屋〉の店舗です。
それを外注の協力で業務を行うことを会社から任されていたのです。

超高層ビルの設計と平屋の建物では構造計算の原理は同じでも
手間数の差が違います。

平屋建てでは「塑性率」とか「累積塑性変形倍率」は、ほぼ問題視されません。

以上のように、構造計算を頼む人の背景によって
依頼者の感じる断面サイズの大きさにはバラつきがあるのです。

依頼者の感覚に振り回されないためには最初が肝心です。
まずは、打合せなどで部材断面決定の条件を確認しましょう。

・どのくらいの変形まで許容できるのか?。

・建物規模に対して階高が高すぎたりスパンが飛んでいたりしないか?。

それから、依頼者のことを知るのも大事なことで、
今はインターネットで検索がスグにできます。相手の会社を検索してみる。

どんな業務をメインに行っているか?。
どんなキャリアを重ねてきたのか?。

個人の設計事務所ならば作品とプロフィールで
それなりの情報を得ることができます。

依頼者が構造分野であれば、名前検索で
論文の著者に上がってくるかもしれません。

どういう論文を書いたのか?。
構造でも何に詳しいのか?。(鉄骨?RC?解析?)

こうして、あなたが事前に情報を集められれば、
相手のことをいくらかは知ることができます。

ひとは、予測外のことがおきますとなかなか冷静にはいられないものです。
それならば、予測外をできるかぎり減らせないものでしょうか?。

上ではインターネットで検索を例にだしましたけど、
ネットに限らず会社内の上司あるいは営業の方に尋ねてみるのも対応策の一つです。

あなたが構造計算で相手から振り回されないためには
相手の情報を多く持つことを心がけてみましょう。