構造計算の正解とは?

「構造計算の正解あるのでしょうか?あるとしたら、正解は一つでしょうか?」

計算自体は一定のルールに則って行いますので、簡単(シンプル)であることは常々お伝えしてますね。

でも、構造計算って複雑な様に見えますね。
その理由の一つに「人によって答えが違う」ということがあります。

たとえば、構造計算によって必要な断面サイズを求めたとき、あなたと他の人では違うサイズを答えることがあったりします。

人によって違うなんて聞くと、「それって計算が間違ってるのでは?」とツッコミたくなりませんか?

いやいや、計算自体が間違っているのではないんです。私も他人の計算をチェックしたことは何度もあります。

検算しても計算結果は計算式通りの値を示します。

それではどうして「答え」が違うのでしょうか・・?どちらが「正解」なのでしょうか・・?

「答えが違う」とは?

先ほど「人によって構造計算の答えが違う」と言ったのを、より正確に表現しますと
構造計算結果の値から導かれた「断面サイズ」が人によって違う
ということです。

計算条件が同じで使う計算公式も同じであれば、構造計算結果の値が人によってが変わってくるということは、まずありません。

違っていたら、それは純粋な計算ミスです。

構造計算結果の値から断面サイズを決める行為が、人によって違う・・だから「答えが違う」ということになるのです。

「答えが違う」理由を探る

「人によって構造計算の答え(断面サイズ)が違うなんておかしい!計算間違いだ!」

となってしまうのは思考がショートカットしています。

構造計算→断面サイズを決めるという単純な図式で捉えるから、人によって答えが違うのはおかしいじゃないか、ということになってしまうのです。

なぜ答えが違うのか?は、構造計算から断面サイズを決めていく過程を紐解き、一つずつ確認していくことが大切です。

計算条件を確認する

まずは、計算条件です。

そもそも人によって、前提とする計算条件が違っていないか?を確認します。

使用する計算公式を確認する

次に、計算に使用する公式が合っているかを確認します。

単位が統一されているか?という点もですね。

条件も公式も同じだったなら?

ここまでは事実ベースのこと。目で見て確認できるものばかりです。

上の2つが同じであれば、計算結果の値も同じになるはずです。

重要なのは、ここからです。

あなたと他の人で、計算条件も、計算の公式も、計算結果の値も同じなのに決めた断面サイズが違っていたら、

『それは何が違っているのか?』を確認しましょう。

たとえば、あなたは計算結果の値とほぼ近い断面性能の部材(断面サイズ)を選んだとしましょう。

それが、他の人は敢えて「一回り大きいサイズ」としていたら・・・?

当然あなたとは、「断面サイズ=構造計算の答え」と捉えていたら違ってはいますけれど、

両者とも部材断面が安全性に支障ないのであれば、どちらも「正解」なのですね。

構造計算の「正解は一つ」ではない

こうしてあらためて考えますと、構造計算から導き出されるのは『ひとつの説』みたいなものなのです。

あなたはピンポイントで断面サイズを決める。ある人は何かの思惑で1回り大きいサイズとする。

決めたことにはそれぞれに裏付けがあるはずですね。

その裏付けをキチンと説明できて、お客さんが納得するものであれば、それぞれが正解なのです。

正解というよりも「納得解」という表現がしっくりきますね。

このように「構造計算には“幅”のようなものがある」ということを受入れるのも大切ですよ。

「ひとつの計算でひとつの答え(断面)しか無い」という捉え方を、

学び始めで凝り固めてしまわないように気をつけたいものですね。