構造計算を行うのに安心な範囲とは
はじめは安全/安心なところで
はじめて行う構造計算。期待もあるのだけれど不安もたくさん。なぜなら、「わからない」ことだらけなので。
でも、大丈夫です。だれでも最初は、わからないのです。
そして、「こわさ(恐れ)」を感じたりします。こわさの原因の1つは「壊れる」という現象が構造にはあるからです。
自分の計算した部材が、なにかの拍子でポッキリと折れてしまわないか・・。
そんな妄想をアタマに浮かべてしまうと、もう汗タラタラ・・。
それならば、材料が壊れることのない範囲が「安全/安心」に感じますよね。この安全/安心な範囲って、部材がどのような動きをするのでしょうか・・・?
ご安心下さい。あなたも以前に耳にしたことのあるシンプルなルールが、そこには存在してるのです。
押したら戻ってきてほしい
はじめて行う構造計算で「安全/安心な」範囲で計算したい。
そのためには、あるルールの中で構造部材が動けばいいわけですが・・見た目にも安全/安心だと感じれるのは、どんな時でしょうか?
たとえば、川の上の一本橋。人が渡ろうとしていて橋の上を歩いています。人の重さで橋も上下に動きます。この橋がポッキリと折れてしまうなら、とてもこわくて渡れませんよね。
でも、この橋がたわんでも元に戻ってくる。すなわち、「押されても戻ってくる」ならば安心して渡れますよね。
押されても戻ってくる状態はちょっとだけ専門的な言い方をしますと「力と変形が比例関係にある」ということです。
力と変形比例関係にある範囲を理科の授業で「フックの法則」と習った覚えがありませんか?中学校の理科の教科書でバネに付いた重りで説明があったと覚えがありませんか?
そうです。この「押されても戻ってくる」範囲で、構造部材の断面を決めてあげれば安全なのです。
「押したら戻る」の条件はシンプル
構造材料において、フックの法則が成り立つ範囲を「弾性域(だんせいいき)」と呼びます。
弾性域で力を受けた構造部材が、グ~ゥっと変形して折れる手前で耐えてるとします。この弾性域ギリギリでのところの建築材料強度を安全率で割ったのが「許容応力度」になります。
(厳密に言えばすこしズレているのですけど、ここは学術的正しさよりもわかりやすさ重視で。)
一方で、力を受けた構造材料に生じている応力を断面積で割ったのが「応力度」です。
構造計算をザックリ捉えれば、構造部材が「応力度<許容応力度」であればOKとなるわけですね。
長期でも、短期でも
構造計算では「普通に生活している状態」での応力(長期応力)と、「地震/風/雪(雪は長期の地域もあり)の荷重を受けた状態」での応力(短期応力)と、両方を考慮する必要があります。
長期でも短期でも、構造部材は「押したら戻る」を満たさなけれ安全な状態とは言えません。つまり、
- 長期応力度<長期許容応力度
- 短期応力度<短期許容応力度
を満たすことが、安全/安心の条件となるわけです。とてもシンプルですね。
はじめて行う構造計算では、この力比べを確実にしておきましょう。
『30代からは構造計算で年収UP』をキーワードに構造計算が『できない』を『できる!』へ、そして年収アップへと導く一級建築士・構造設計一級建築士です。こちらでもブログを書いています→ https://ameblo.jp/ryo3whisky