構造計算書を手書きするのは時代遅れ?

◆なぜ、構造計算で手計算が大事なのか?。

いまの構造計算実務では
コンピューターの使用が前提となっている傾向です。

しかし、私はあえて手計算で行うことを
構造計算ビギナーの方にすすめます。

確かにコンピューターを使用しての作業効率の良さは体感してます。
効率はコンピューターが優位なのに、なぜ手計算なのか?。
それは、手計算だと「構造計算のルール」が目で見て確認できるからです。

コンピューターは計算処理を高速で行ってくれます。
けれど、計算している過程をディスプレイに映し出してくれません。
計算結果だけ出て来て「なぜ、この計算結果なのか」を
導いてはくれないのです。

一方で手計算は構造計算のルールが一目瞭然です。
頭の中へルールをインストールしやすいです。

構造計算が出来るようになるには構造計算でのルールを
確実に自分が分かっている必要があります。

構造計算のルールは、至ってシンプル。
コンピューターでの計算も所詮は構造計算者が使う
ルールを高速で処理しているに過ぎません。
それに、自分が手を動かして計算したなら納得もしやすいですよ。

◆手書き計算書の一長一短。

私自身は、構造計算を行うのに電卓(関数電卓!)を使って計算して
A4版の5ミリ方眼紙(天のり形式)に鉛筆(シャープペンシル)で
計算書を書いて仕上げることを好んでいます。

また、構造計算をマスターするのにいきなりパソコンを使うのではなく
自分の手で計算して、計算書を書くことを推奨してます。

だからといって、手書き計算書のすべてが良いとは思いません。
便利なツールはドンドン使って行きたいです。

つい先日も、業務で鉄骨の継手を
計算するのに市販の計算プログラムで
対応しきれないので、手計算で計算書を作りました。

その時を振り返りながら
手書き計算書の一長一短を考えてみました。

[手書き計算書のメリット]
・すぐに作り始められる。
・レイアウトが自在にできる。
・慣れるとカンタンな計算書を1枚あたり30分ほどで作れる。
・確認審査でスピーディー対応できる。

[手書き計算書のデメリット]
・人によっては字が整わない。
・計算変更が生じた時に計算書の修正が手間取る。

一方で表計算ソフトを使った計算書の
一長一短も振り返りました。

[表計算ソフトのメリット]
・何度も行う計算ではシートの再利用で効率的になる。
・大量の計算を処理できる。

[表計算ソフトのデメリット]
・シートを作るのに時間がかかる。
・レイアウトが表計算ソフトのセルで 制限される。
・図を描きづらい。(CADで作図して貼付けが多い。)

手計算、表計算ソフトのどちらもメリット・デメリットがありますね。
一つのやり方にこだわりすぎず、
手書き/表計算ソフトの使い分けを状況に応じて行いましょう。

そして、読み手にはわかりやすい内容の構造計算書
とするのは一貫して通し続けましょう。

『〈やり方〉は決めつけずに〈あり方〉はブレない。』
これが、十分な報酬を得るための実践的構造計算です。

◆それでも構造計算書の手書きをすすめるわけ。

前段では、構造計算書を作るのに
・自らの手で書く「手書き計算書」
・表計算ソフトなどを使って作る計算書  について、
それぞれのメリット・デメリットを上げて使い分けをすれば良いと伝えました。

だけど私は、構造計算の初心者のかたへ「手書き計算書」を作ることを勧めてます。
なぜでしょうか?。理由は3つあります。

1)手軽にできる。
構造計算を行って、計算書としてまとめるにA4の5mm方眼紙があれば作れます。
もっと極端な言い方ですと、コピーミスの裏紙に構造計算を書いたとしても
複写して相手に渡せば、それが「計算書」として成り立ちます。

2)その場でできる。
表計算/文章作成ソフトを使うとパソコンを持っていないと作業できませんね。
でも、手書きでは不要です。
計算式も自分の頭の中に入っている、あるいは構造ハンドブック等が
手元にある状態なら現場事務所に監理に出たときもその場で計算し検討書として渡せます。
渡された相手は、驚きと尊敬の目であなたを見てくれるでしょう。

3)カンタンにできる。
計算書としての「フレーム」を会得すれば
何をどこに書くのかは、ほぼ自動的に書いていけます。
表計算ソフトですとセルの調節やレイアウトなど
見栄えにこだわるとストレスも増えます。

いかがでしょうか?。
手計算で書く構造計算書って、それほど悪い印象持たないでしょう?。

ですから、構造計算をマスターしたいと思うなら
まずは、自らの手で構造計算書を書くことを行ってみて下さい。