構造計算とコンピューターの関係性

◆構造計算は何でもコンピューター任せで大丈夫なのか?。

私と同じように建築構造の設計をしている知人との雑談で
構造計算を頼んだ相手にその建物の地震力を電話で尋ねたら
「確認します。」のひと言で電話を置かれ、
しばらく時間がたった後に回答きたそうです。

それで、何日か経った後に
風荷重いわゆる風圧力も必要になったので
再び電話して風圧力も尋ねたそうです。

すると、また「確認します、、、。」
のひと言で電話を置かれてしまった。
一日過ぎてから電話で回答が届いたとのこと。

構造計算を自分で行っていれば
現在計算している建物の地震力も
風圧力も即答できてよさそうなのに

「なぜ、すぐに答えてくれないのだろう?。」
と、知人もいぶかしがってました。

私なりに、この構造計算をした人を
推し測ってみますと

・構造計算を単なる計算作業と思ってる。
・建物の総量を自分なりに把握できてない。

という2つのことがありそうだと感じました。

いまは、建築の構造計算もコンピューターなしでは
実務が進まない位にコンピューター使用が前提になっています。

一方で、私が実務を始めた頃は手計算で建物1棟を
構造計算していた方が周りにたくさんいらっしゃいました。

ここで大切なのは、全て手計算が良くて
コンピューター依存が良くないという考え方ではありません。

一つの構造計算を行うにも手計算とコンピューターの両方を
バランスよく使えることが大切ということ。

以前の職場で「自分の計算が信じられないので
何でも構造計算プログラムに入力して構造計算させる。」

と、平然と言い放った同僚がいました。

それも、ひとつの考え方ですから
私が受け付けないということは無かったです。
ただ、直接聞いたときには言葉が出ませんでした。

でも技術者であれば、自分が計算した内容に
「これは、適切に構造計算した結果である。」
と、胸を張って言えたほうが
構造計算を頼んだ相手も安心すると思います。

確かにコンピューターは便利です。
その便利さに頼りすぎるのは良くないと感じます。
コンピューターに頼りすぎずに自分の手で計算したことも
自信が持てるように計算スキルを維持しておきたいですね。

◆構造計算は、高度な計算プログラムがあれば十分ですか?。

以前の勤務先での出来事です。
私の同僚が、片持ち構造の構造計算を行おうとしていました。

でも、同僚は骨組み全体を捉えて構造計算を行う予定だったようです。
骨組み全体を捉えることは素晴らしいことです。
骨組みを立体として認識して構造計算をしようとしてます。

それで、私は相談受けました。
『立体解析プログラムで計算ですよね?。』
という尋ね方でした。

立体解析プログラムは、構造計算を始めてキャリアが浅い時には
計算結果を読み取るのはカンタンではありません。

一方で、正確に入力すれば正確な値を
計算してくれるプログラムではあります。

しかし、今の彼のスキルで取り組むべきではないと感じました。
そこで、立体の骨組みを水平部材と鉛直部材とに分離した絵を描きました

そして、
1)まずは水平部材を計算すること。
それから、
2)水平部材の反力を鉛直部材の荷重で与えて計算する。
の二段構えで作業するのを提案しました。

結果として、私の二段構え戦術が彼には理解しやすい
ようで、その後の作業予定に組込めました。

構造計算では、色々なプログラムがあります。
ただ、高度な計算プログラムがあれば全てが解決するわけではありません。

私よりも何十歳上の先輩方は
コンピューター無しで構造計算を行ってた世代です。
それでも安全性を自らの構造計算で担保されてました。

高度な計算プログラムを使う前に力の伝わるルールを理解した方が
構造計算全体を腹落ちしやすいと思いますよ。