耐震設計法(6):耐震設計ルート3とは
1)大地震時を想定する
建築の構造計算で許容応力度内に部材応力度を納めるのを「許容応力度計算」といいます。
許容応力度計算は地震力を扱うときに建物の存在期間中で2~3回程度は遭遇して多少の損傷を受けても
補修すれば使い続けられることを目的とします。
一方でルート3というのは、大地震時を想定します。
100年に1回くらいに起こる大きな地震に対して、倒壊しないで人命を保護することが目的です。
構造計算の実務では
- 許容応力度→1次設計
- 保有水平耐力計算→2次設計
と呼んだりしています。
ルート3は保有水平耐力計算を行うので2次設計となります。
2)5倍の地震力
保有水平耐力計算を平たく言えば地震力と建物の耐力の〈力比べ〉です。
想定する地震力は、1次設計で標準せん断力係数:Co = 0.2です。
保有水平耐力計算の2次設計ではCo = 1.0と5倍の地震力を設定します。
構造業界で「1G(イチジー)」というフレーズを聞くことがあります。
この1GというのはCo = 1.0と同じ意図と捉えて構いません。
1Gの地震力を受けた時に、建物がパタンと倒壊しないでいる状態を計算で確認するのがルート3です。
3)建物の粘り強さ
計算で5倍の地震力を建物に与えます。
しかし、建物自体の粘り強さによって与える地震力を低減させます。
建物自体の粘り強さを決める指標が〈Ds(ディーエス)値〉です。
Ds値は構造種別によって異なります。値は0.25~0.55まで。
・粘り強く変形できる建物→Ds値が小。
・堅く変形しづらい建物→Ds値が大。
このDs値の設定を理解できるかがルート3(保有水平耐力計算)の重要ポイントの1つです。
ルート3は今の構造計算の実務では当たり前に行われています。
それは、パソコンの性能向上が一役買っているのです。
私が構造計算を始めた頃はパソコンの普及が始まった頃です。
(Windows95の発売時期と重なります。)
この頃は保有水平耐力計算を手計算で行っていました。
その手法は「節点振り分け法」という手計算で行いやすい計算でした。
この計算法の問題点は「変形を追いかけられない」こと。
すなわち、建物が大地震時に倒壊する手前までどのくらい変形するかを把握できないのです。
今はパソコンが進化して構造計算プログラムも技術者一人ずつに割り当てられる環境です。
ルート3の計算を上司や先輩が行っていたのなら、横で計算の結果を見せてもらいましょう。
いまは判らなくても、まずは見る/触れるということから始めましょう。
ここまで、「耐震設計法」についての記事でした。
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