H形鋼のカタチのわけ
H形鋼とは
建物の構造部材で大梁・小梁があります。
この大梁・小梁に必ず使われてるのがH形鋼です。略して『H鋼』と呼ばれたりもします。
このH形鋼を梁として使う時に、断面の形状をカタカナの「エ」のような方向で使います。
さて、あなたは
『H形鋼というのになぜ「エ」で使うの?』
という疑問が頭に浮かびましたか?浮かんだならば、素晴らしい!!
実は、そもそもH形鋼がHのカタチであること・それを敢えて「エ」のカタチで使うことには、ちゃんと理由があるのです。
まずはここから、一緒に考えていきましょう。
なぜ「エ」の向きで使うのか?
ポイントは3つ
- 断面二次モーメントの算定式
- 曲げを受けた梁断面で一番変形するのは?
- 鉄は軽く強く使いたい
です。一つずつ見ていきましょう。
断面二次モーメントの算定式
断面二次モーメントを求める材料力学の算定式をご存知ですか?
断面二次モーメント $[cm^4]=$ある断面積$[cm^2]$×(図心軸からの距離の2乗$)[cm^2]$
と表されます。
図心軸から離れたところに断面が集まっているほど、断面二次モーメントは大きくなります。
「断面二次モーメントが大きい=曲がりにくい」なので、「図心軸から離れたところの断面が大きい=曲がりにくい」
ということになりますね。
曲げを受けた梁断面で一番変形しやすいのは?
梁の断面が曲げられようとした時に、一番変形(延びたり縮んだり)するのは断面の縁(へり)のところです。断面の中心は大きくは変形しません。つまり、
「断面の縁(へり)が変形しづらい=断面の縁の厚さや幅が大きい」
ということになります。
鉄は軽く強く使いたい
鉄の比重をご存知ですか?
水が1.0です。
鉄はなんと!7.85もあります。
水1立方メートルで1トンですから、鉄は同じ1立方メートルなら7.85トンです。
ギッチリ詰まっている断面ですと鉄は相当重たいです。
でも、鉄の特性として「薄く延びる(延性)」という性質があります。
鉄のこの性質と、上の2つを合わせて考えると、カタカナの「エ」の断面形状が合理的なかたちになるわけです。
ウェブの役割とは?
ここまでの話で、「エ」の形にすると上下フランジが外力からの曲げモーメントに抵抗する要素だということがお分かりいただけたかと思います。
では、H形鋼のウェブは、どういう役割なんでしょう。
H形鋼を梁として使用した時には、鉛直荷重を受けますね。鉛直荷重を受けた梁は変形をします。変形をするということは梁に応力が発生するということです。
さて、梁に生じる応力はいくつあるでしょうか?
・・・・・
・・・・・
正解は「2つ」です。
- 曲げモーメント
- せん断力
でしたね。
実は、H形鋼のウェブは荷重を受けた時に「せん断力」を伝える役割をするんです。
それから、もう一つあります。こちらの役割も大事なんです。
それは、
「上下のフランジをつないで一体となるように変形させる。」
です。
ウェブが無いと、上下のフランジだけで梁端部が接合されます。中がスカスカだと、上下のフランジはバラバラに変形することになります。そうなると曲げに弱くなってしまいます。
ですからH形鋼のウェブって、意外と重要な役割を持っているのです。
H形綱のカタチと「エ」で使われる理由、ご理解いただけましたか?
「H」ではなく「エ」形で使用することによって、フランジ部分が曲げモーメントに、ウェブがせん断力に、それぞれ対応する。それで軽さと強さを両立した、非常に合理的なカタチとなるわけですね。
『30代からは構造計算で年収UP』をキーワードに構造計算が『できない』を『できる!』へ、そして年収アップへと導く一級建築士・構造設計一級建築士です。こちらでもブログを書いています→ https://ameblo.jp/ryo3whisky